夏の日の雨は


ああ、夏だなという匂いがします。



「香り」、というより、やっぱり「匂い」。








素足では歩けないくらいのアスファルトの上に、ポッと黒い点が付いたかと思うと、その点はあっという間に、端からゆっくり薄くなって、付いたときと同じように、ポッと静かに消えていく。


そのたくさんの繰り返し。


その時の匂い。


コンクリートの上でも、同じ匂い。




グラウンドの土の上。

ポツッと落ちた雨粒は、そのまわりの土をギュッと集めて、その跡の“カタチ”を作る。

ポツッ、ポツッ、その“カタチ”だけ残して、雨粒はまた雨に寝るべく、空に戻って行きます。







そんな雨上がりは、クワガタが捕れるんだぞ、という号令の元、近所の子供たちは、その声の主である年上の兄ちゃんたちを先頭に、それぞれ好きな球団の野球帽かぶり、秘密のクワガタの林へ向かい、横切るヘビに固まったり、スズメバチの襲来に逃げ回ったり、葉っぱについた毛虫を揺らしてみたり、と、そんな冒険をするのです。







「あっ、洗濯機のフタ開けたままだった。」と、さっき外に出たときに、久しぶりに感じた、雨の匂いで、一気にそんな想いが湧き上がりました。




夏休みは、もうちょっと先。




でも、ちびっ子諸君。



クワガタは、きっとクヌギの木の蜜なめながら、君たちを待っておるぞ。



変わっていない、そんな林も、きっとどこかにあるはずです。




エアコンキンキンのデパートには、しっかりクワガタもいるのだけど、雨の匂いで想い出す、場所ではない。



チロッと外に出てみると、いろんなものを、見つけられんだぞ。



ドキッとするけど、おもしろいんだぞ。



いいだろ〜。



なんて思いながら、ちょっとだけ、当時の時間に戻りたいと、アパートのドアの前で思いました。




さ、今週もがんばりませう。(笑)