路地の糸。
雨上がり、風が心地よいです。
昨日は、信号待ちの自転車の上から、久しぶりに夏の形の雲を見ました。
さっき、外を歩いたら、薄く高い秋の雲と、交代していました。
一匹の、ツクツクボウシが鳴いて、細い路地の塀と電線を、ジョロウグモが糸をはり、巣で繋いでいます。
ボクの故郷では、兵隊グモと呼んでいて、父がよく枝の上で「クモ合戦」を見せてくれました。
当時は、「父ちゃん、よくこんなでかい蜘蛛触れるなぁ」なんてビクビク観てましたけど、あの、靭くて、少し粘り気のありそうな、白い糸の束は、なぜか不思議と今の季節の風の温度といっしょに、記憶に残っています。
以前、「甥っ子たちにも見せてやりよるの?」と聞いたとき、父は、「そういえば、あん蜘蛛は見らんごとなったなぁ」と、つぶやきました。
今は、家のまわりも、新しく道ができたり、家が建ったりで、蜘蛛の姿も見かけなくなったそうです。
あのなんとなく、ドキドキする怖さと同じくらいの興奮を、きっと甥っ子たちも感じられたはず。
自然の中で、自然のものと遊ぶこと。
だんだん、貴重なことになってきていますね。
うちのアパートのまわりには、ありがたいことに、自然が多いです。
ときどき、カーテンにでっかいカナブンがしがみついていて、「うぉ!!」ってこともありますが、でも、四季の変化に気づかせてくれ、記憶呼び戻し装置のスイッチを押してくれる路地の自然の贈り物には、感謝感謝の気持ちです。
さ、今日は夕焼けも、月も、素晴らしくなりそうな予感。
まず、陽が傾いたら、明日の朝のパンを買いに行くついでに、チラッと歩いてまいりませう。