レンズ。
「風が気持ちいいね」
最後にそんなセリフで終わりました。
「できない」のと「しない」のは違う。
普段、ことばのことは、仕事柄考えることが多いのですけど、
もう一度、いろんなことに気づける映画でした。
心は複雑です。
でも、風が吹いて、気持ちいいと思えるように、
実はとてもシンプルに、反応するものなのかもしれません。
この映画を見て、ホロッと泣けるのも、きっと、シンプルな反応です。
歳のせいで、涙もろくなったことを差し引いても。
しかし、その風が強すぎれば、窓を閉め、雨戸まで閉めてしまうように、
まわりの環境で、心でのとらえ方が限られてしまうのでしょう。
人は、自分の一つのレンズで何かを見て、それをとらえています。
レンズの内側からのその景色は、その人だけの景色。
そこから、自分のレンズのそとにあるたくさんのカメラを見て、
そのそれぞれのレンズを外側から見ることはできます。
自分の視点からの景色の中で、いろんな人のそれぞれの景色が、
一つ一つ、進んでいって、そのレンズの中からしか見えないことの
集まりが、普段の生活なのかもしれません。
いつもまわりにいる人のレンズにどんなことが映っていて、
それを心地よい風ととらえているのか、窓を閉めるほどの
暴風と考えているのかなんて、外のレンズからは見えないのです。
一つの生活の中に、それぞれのレンズの視点があって、たぶん、
ことばにしないと、察することのできないこと。
その、ことばにしようと思える、誰かがいることが、
生きていく上での最高の幸せなんだと思います。
その誰かがいる、映画です。
また、ふと思い出して、観てみます。
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