『西の魔女が死んだ』
ボクにとって、とても大きな作品になりました。
小さい頃、ばあちゃん子だったからか、
今、こういう仕事をしているからか、
自然に囲まれたところで育ったからか。
うまく、整理できないのですけど。
最初は、少し、子供だましの作品では…、なんて思ってたのですが、
もう、最初の数分で、ぐんぐん作品の中に惹き込まれていきます。
西の魔女。
おばあちゃんは、静かで優しく、「です」「ます」と、
学校へ行けなくなった、孫の“まい”に話しかけます。
「です」「ます」は、ときに相手との間に距離をとる、言葉です。
でも、おばあちゃんの発するこの言葉には、温かい愛情がこもっていて、
それがストレートに、伝わっていっている気がするのです。
学校という空間で、自分の位置がわからなくなってしまった孫。
何かを教えるというのではなく、「導く」ことば。
「自分で、考えなさい」「自分で、決めなさい」
突き放したように聞こえるこの言葉に、込められる、
「です」「ます」のおばあちゃんの温度。
「魔女」とは、何か。
始まる“魔女修行”。
心の強さ。
そこに現れる、受け入れられないこと。
怒り、疑念、葛藤。
最後に、気持ちの納め方を見つけられずに、すれ違う二人。
あの、自分に意固地になってしまう感覚も、もうあとからには
どうしようもなくなり、持ってしまう大きな後悔も、みんなみんな
その大小、深浅はあるにせよ、一度はあるのではないでしょうか。
ラストシーン。
大きなひねりや、サプライズがあるのではないのだけど、
もう、二人のつながりに、ぽろぽろと泣けてしまうのです。
まるで、自分がその経験の中で繋がれたように。
映像の中の風景。
出てくる食べ物。
そして、音楽。
それぞれに、楽しめる作品だと、思います。
「毎日のちょっとした変化が楽しみなんです。
だから、変化を前もって知る必要はありません。」
たくさんの、おばあちゃんの言葉も、聞けます。
撮影後のインタビューでの言葉が、ボクにはいちばん強く重く、
残ったのですけど、これはまだまだ、消化しきれていないので
自分の中でもう少し、温めてみようと思います。
ボクにとって、とても心に残る、作品になりました。